イルミネーションが街にあふれる華やかな季節12月23日(土)・24日(日)の両日で、日本の有名音楽アーティストHYDE(Vo : L’Arc-en-Ciel、VAMPS)が、ソロのクリスマスコンサート「HYDE Christmas Concert 2017 – 黑ミサ TOKYO -」を開いた。会場となった千葉・幕張メッセ国際展示場には2日間で24000席が用意され、チケットは早くからソールドアウト。23日は全国の映画館を使ったライブビューイングで生中継され、こちらも観覧チケットはソールドアウトを続出させた。15年前に発売された、HYDEソロ活動1枚目のアルバム「ROENTGEN」の曲も演奏されるとあって、どのチケットも入手困難を極めた。
この黑ミサというイベントは北海道・富良野に雪が積もる頃、HYDEのファンクラブ限定のイベントとして1日約200人のプレミアムディナーショーの位置づけで2009年から始まったもの。今年は12月上旬に7回目を無事に終えている。
ワールドワイドに活躍するHYDE。海外のファンも足を運びやすい都心で、1日12000人規模の黑ミサイベントを行うのは今年初となる。クリスマスコンサートという華やかな日。演奏はダブルカルテットを含むオーケストラ編成17人(ピアノ・クラリネット・フルート・パーカッション・ドラム・ギター・ベース・コーラス)で行われ、ゲストにはL’Arc-en-CielのギターリストKenが招かれた。服装はチケット販売時にスマートカジュアルというドレスコードが告げられ、ワンピースにボレロを羽織ったファンの姿も多く見られた。
ステージ上には細長いキャンドルが幾つも置かれ、厳粛な雰囲気が漂う。ステージ前方の下手にはグランドピアノが、上手にはギターやバスなどの弦楽器が、ステージ後方は一段高くなってヴァイオリンやフルートを含むオーケストラの席が用意された。ステージ床もフロアの床にもレッドカーペットが敷かれている。開演は両日共に17時からとなった。席に12000人が着席するのを待って、会場内にはSEが流れ始めた。ソロアルバム「ROENTGEN」の1曲目に収められている「UNEXPECTED」のイントロダクションのようだ。ステージ上段の演奏者から順に姿を現して着席。残るはステージ中央に置かれる漆黒の椅子が空席となるだけ。その椅子の後方に下げられる鳥籠の中に眩しく光が灯る。下手からHYDEがステージに姿を現し、漆黒の椅子に着いた。このレポートは23日のものとなる。
最初に演奏されたのは「WHITE SONG」。HYDEが紡ぎだす歌声が、歌詞の情景を浮かび上げ、聴く1人1人のイマジネーションを広げていく。スピッカートを刻むヴァイオリンの音色はHYDEの声に合わさり厳粛な雰囲気で会場を包み込んで始まった。続いて「SECRET LETTERS」。HYDEが伸びやかに歌い上げる。ここでHYDEがあいさつを入れた。「ようこそ黑ミサへ。黑ミサと言っても血を飲んだりしなくていいからね。恐ろしいイベントではないです。今までは雪の降る北海道富良野でひっそりとやっていました。リラックスしていいからね!今夜はオーケストラの演奏と一緒に聴いてください」と伝えると、会場から拍手が沸き起こった。
続いた「ANGEL’S TALE」は、ギターYUKI (DUSTAR-3、Rayflower)が弾(はじ)くアルペジオの柔らかな調べから。コンサートの全曲アレンジを手掛けたピアニスト堀向彦輝が穏やかに、「THE CAPE OF STORM」では躍動的に曲を引きたてた。「EVERGREEN」では、再びHYDEが話し始める。「交流のあった画家の金子(國義)先生がラジオでこの曲を聴いてくださって、なんていい曲なのかしらって録音して毎日聴いてくれていたそうです。先生は3年前に亡くなったんですけれど、人が亡くなるってことは本当に辛いです。心にずっと塞がることのない穴が開いたみたいでね。そういうことがだんだん増えてきましたね…」と寂しさを滲ませ、「SHALLOW SLEEP」に繋げた。HYDEが「ROENTGEN」について話す。「レントゲンを作ってから15年が経ちました。あの時は精も魂も尽き果てちゃってね。もう10年は作れないってインタビューで答えていたんですが、いつの間にか15年経っていました。最近、こういったコンサートをしていると、曲が選ぶほどないんですよね。曲が欲しいなって思い始めています。後、5年ぐらい待っててね」と伝えた。その後、カバー曲として映画「戦場のメリークリスマス」のテーマ曲「メリークリスマス ミスターローレンス」にデビッド・シルヴィアンが歌詞を付けた「Forbidden Colours」が初披露され、globe20周年で小室哲哉からカバーを依頼された「DEPERTURES」が優しく贈られた。
続いてピアノソロが静かに響き、HYDEが青色の薔薇を1輪手に持つ。VAMPSのバラード曲「VAMPIRE’S LOVE」が大切そうに甘い音色で歌われた。HYDEがVAMPSについて話す。「みんなをVAMPSのことで驚かせてしまって、ごめんね。でも解散ではなく休止というところに希望を見い出して、そんなに悲しまないでください。僕も、復活を願っている1人です。それよりもね、もっと酷い状況のバンドがあるからね。こちらはスケジュールが合わないねぇ。僕1人では、どうしようも…。でも今日は、そこから1人連れてきました。Kenちゃんです!どうぞ」と、ゲストのKenが招かれる。Kenが、「もう後ろで聴いているだけでも、泣きそうで。最近涙腺が弱くて、握手するだけでも泣きそう」と話す。HYDEの「クリスマスはお好きですか?」との問いかけにKenは、「苦手。何かしなくちゃいけないっていう雰囲気が嫌ですね。だけどHYDEが、こういうの好きだから、移動車の中で聞かされるんですよ。どれだけクリスマスが素敵なのかって話を。サンタさんの話もね。やっと、そういう世界もいいなって思えるようになりましたよ」と話すと会場からは笑いが起きた。ここからはL’Arc-en-Cielの楽曲へ。クリスマスに相応しい曲をと「Hurry Xmas」を演奏。HYDEがフロアに向けて拍手を促した。歌いながら「こう、拍手を入れると演歌になっちゃうんでね。裏打ちでお願いします。そう、みんな上手!」と持ち上げて曲に入る。続く「winter fall」は感動してすすり泣くファンも現れた。Kenがギターソロを奏でて始めたのは「MY HEART DRAWS A DREAM」。オーケストラアレンジで壮大に、伸びやかに、ファンに贈られた。ヴァイオリンの調べ美しく始まった「叙情詩」。オーケストラの音色に乗せてHYDEが情熱的に歌い上げた。「ちょっと悲しい曲を聴いてください」と、HYDEが伝えて始まったのは「a silent letter」。奥深い心の傷みを含んだ歌詞を、静かに、朗朗と響く声で歌う。続く「foebidden lover」は、城戸紘志(Dr)がアレンジするスネアドラムの音から。原曲にリスペクト伺えるアレンジで印象深く始まった。オーケストラとKenのギターが共鳴して、琴線に触れ入ってくる。熱い炎が上昇し、怒りを表していくさまを、歌声1つでHYDEが浮かび上げる。フロアは息をこらして、聴き入った。
HYDEが再び語りかける。「次はKenさんの曲で、僕の作詞です。いい感じで化学反応が起きました。そういうところがバンドのいいところですね。僕、冬って温かいと思うんです。頭がおかしいようなことを言おうとしてるんじゃないよ?冬が寒いのは小学生でも解る。そうじゃなくてね…」と話すHYDEにKenが合いの手を入れる。「HYDEの目にはプリズムが入っているから見えないものが見えるんですよ。昔からそういうところがある。だから曲が作りやすいよね。いい意味でね。違うベクトルで指摘してくれるから、いいなって思う」と語る。冬の話に戻したHYDEは、「冬は寒いから温まろうとするでしょう?お鍋を囲んだり、人が集まったりする行為が温かいなぁって思います。暖を取ろうとしたり、手をつないだりすることも温かい」と話し、「雪の足跡」に繋げた。「次の演奏でみんなでの演奏は最後になりました。平和と、大切な笑顔、その永遠を祈って歌いたいと思います」と、「星空」を歌う。ステージバックには満天の星空が浮かび上がった。
曲の終わりにHYDEが指揮を執りピリオドを付ける。穏やかで温かみのある拍手の音は暫らく鳴り止まず、今夜の全てを抱きしめるかのように会場を包んだ。
オーケストラとKenがステージを後にし、バンマスを務めあげたピアニスト堀向彦輝(通称:彦ニャン)とHYDEの2人きりに。HYDEが「2人でね、もう1曲やりたいと思います。もう年末ですね。今日はやって良かった。楽しかった。どうしたらみんなが楽しんでくれるのかなって考えて今日を迎えました。みんなが喜んでくれて、僕自身も歌を楽しめました。またやりたいなぁ。僕ね、歌うのが好きになったのは最近のことで、それまではしんどいなって思っていました。今は自分の意思を伝えるのが気持ちいい。来年はまだ白紙状態なんですけれど、歩みを止めるつもりはないので、ついてきてください。最後の曲は、みんなが良い夢を見られるように、子守唄を歌います」と話し、「未来世界」へ繋げた。クリスマスらしく「きよしこの夜」の1節がアレンジして組み込まれた「未来世界」。1音1音を大事そうに歌うHYDE。上質な音の贈り物は、ファン1人1人の胸に収められ、幸せな余韻と共に持ち帰られた。
ここで黑ミサグッズの嬉しい知らせが舞い込んだ。明日12月26日(火)12時から、グッズの通販が開始される。イベント当日の幕張は黑ミサグッズを買い求めるファンの長蛇の列ができ、早い時間からソールドアウト商品が多数見られ、ファンからは再販希望の声が上がっていた。今回の注目商品はHYDEが手掛けたイベントパンフレット。映画のパンフレットのように読み応えのあるパンフレットを作りたいとのHYDEの希望から、披露された1曲1曲の創作秘話が付けられており、ファンには外せない1冊となっている。また、15年前にHYDEがデッサンした絵が、部屋を幻想的に変えてくれるライトボックスも人気が高く、早い段階での完売が予想されている。詳細はHYDE公式グッズサイトVAMPROSE STOREで確認できる。
HYDE Christmas Concert 2017 – 黑ミサ TOKYO –
日時 2017年12月23日(土)、 24日(日) / Open 15:30 / Start 17:00
会場 幕張メッセ国際展示場4・5・6ホール
チケット価格(税抜) / SS席 28,000円 / S席 15,000円 / A席 12,000円
12月23日(土)同時中継 全国映画館ライブビューイングチケット価格(税込) / 4500円
出演アーティスト
HYDE
Special Guest Guitar: Ken (L’Arc-en-Ciel)
Piano: 堀向彦輝
Guitar: YUKI (DUSTAR-3, Rayflower)
Bass: 砂山淳一
Drums: 城戸紘志
Percussion: 野崎めぐみ
Flute: 赤木香菜子
Clarinet: 大橋裕子
1st Violin: 納富彩歌、川口静華
2nd Violin: 東山加奈子、亀田夏絵
Viola: 山田那央、金孝珍
Cello: 友納真緒、原口梓(23日)、今井香織(24日)
Chorus: LYNNE HOBDAY、竹本健一
SETLIST
01.WHITE SONG
02.SECRET LETTERS
03.ANGEL’S TALE
04.THE CAPE OF STORMS
05.EVERGREEN
06.SHALLOW SLEEP
07.Forbidden Colours
08.DEPARTURES
09.VAMPIRE’S LOVE
10.Hurry Xmas
11.winter fall
12.MY HEART DREAWS A DREAM
13.叙情詩
14.a silent letter
15.forbidden lover
16.雪の足跡
17.星空
18.未来世界
関連サイト : HYDEIST / HYDE Christmas Concert 2017 – 黑ミサ TOKYO –
コメントを投稿するにはログインしてください。